痒いところに手の届く「スカイメモS」解説 [天文]
ケンコー「スカイメモS」は人気のシステム型ポータブル赤道儀である(星ナビ2015年8月号p42-47)。名称的にはケンコーの「スカイメモシリーズ」の後継機ではあるが、実際には米国Sky-Watcher社のStar Adventurerをベースにした製品である(天文ガイド2015年4月号p98-103)。OEM関係は分からないが、欧米規格の太いネジ(ドイツネジ 3/8インチねじ)が使われているから、追加機材の購入には注意が必要である。日本製品で一般に使用されている1/4インチねじでは合わないことがあるためだ。スカイメモSの使用には、自由雲台と三脚が別個必要となる。
●「スカイメモS」下面:3/8インチめすねじ
●スカイメモS用微動雲台
スカイメモS取り付け部(上面おすねじ)も三脚取り付け部(下面めすねじ)も3/8インチ
●カーボンファイバー三脚の雲台取り付け部
当方所有の三脚で調べてみると、SLIK(左)は1/4インチと3/8インチねじ兼用、マンフロット(中)とジッチオ(右)は3/8インチねじである。スカイメモS用微動雲台は、SLIKとマンフロットにはそのまま接続可能である。ジッチオ3型3段システマティック三脚は半球状のビデオ雲台で使用しているため、そのままでは接続できない。5〜10cmくらいの3/8インチねじが入手できればスカイメモS用微動雲台を取り付けることができそうだ[脚注1参照]。もちろんビデオ雲台でない場合は3/8インチねじでそのまま接続可能である。
SLIKの自由雲台について
上面のカメラ接続部はいずれも1/4インチおすねじである。下面は、SLIKの自由雲台「SLIK SBH-280」は3/8インチめすねじ(1/4変換ネジも付属)、「スリック バル: Variable Ball Joint Head」は1/4インチめすねじである。
●SLIK自由雲台 左:スリック バル、右:SLIK SBH-280
●下面のネジ径 左:バル 1/4インチ、右:SBH-280 3/8インチ
●SLIK SBH-280と付属のショートプレート
SBH-280はショートプレートにそのまま接続できる。エツミ止ネジ大IIなどのネジ変換部品を使うとスリック バルのような1/4インチめすねじも接続可能である(記事最下段参照)。
●スカイメモSの組み立て
(左)SLIK三脚に取り付け:モード選択ダイヤル側 (右)マンフロット三脚に取り付け、ショートプレート+自由雲台SBH-280を設置
●極軸の合わせ方 [脚注2参照]
①アリ溝プレートに明視野照明装置を取り付ける。
②経度補正。観測地の経度が東経135゜(観測地の標準時刻の経度)から何度ずれているかを合わせる。極軸望遠鏡側の「指標線」と「日付目盛リング」側にある「経度差補正目盛」を合わせる。この写真は、観測地が東経142゜で、東側(E側)へ7゜で設定した。観測地が大きく変わらなければ、この設定は1回でよい。
③日付と時刻を合わせる。クラッチノブを緩めて、アリミゾプレートが回るようにする。本体側の「時刻目盛」と外側の「日付目盛リング」を合わせる。「時刻目盛」は0時から10分ごとに目盛がある。「日付目盛リング」は30日ごとに長い目盛、10日ごとに中目盛、2日ごとに短い目盛となっている。月数は10日〜20日の中目盛の間に書かれている。たとえば、極軸設定日時が11月20日の23時なら写真のように合わせる(31日は設定されていないが、30日で設定しても問題ない)。
④極軸望遠鏡内のスケールの6時の位置に北極星が来るようにスカイメモS用微動雲台の高度・左右つまみで合わせる。外側の円(2012年)、中間の円(2020年)、内側の円(2028年)なので、2015〜2016年なら、北極星の位置は6時の外側の円と中間の円の間となる。
設定が終了したら、クラッチノブを締め、「モード選択ダイヤル」を★にして電源オンにしておく。
●スカイメモSによる広角レンズ撮影例:おうし座北流星群(2015/11/13 1:35 EOS 5DIII + Sigma 20mm, F3.2, ISO6400, 30")
●アリガタプレート+バランスウエイトによる望遠撮影
a: 微動台座 & アリガタプレートと1kgバランスウエイト b: EOS 5DIII + Prominar 350mm (TX-07C)を取り付ける
●ホットシュー用ファインダー
Prominarの欠点はファインダーを取り付ける台座がないことである。カメラのホットシューにファインダーをつけた。詳細はこちらを参照。
●スカイメモSによる望遠レンズ撮影例①:アンドロメダ座大星雲M31(2015/11/13 0:29 EOS 5DIII + Prominar 350mm, F4.0, ISO6400, 90")
●スカイメモSによる望遠レンズ撮影例①:オリオン座座大星雲M42(2015/11/13 0:15 EOS 5DIII + Prominar 350mm, F4.0, ISO6400, 60")
●同:トリミング
スカイメモSに付属する3/8→1/4めすねじ変換部品を使うと、日本製三脚の台座にスカイメモSを直接取り付けることができる。また、エツミ止ネジ大II(3/8→1/4おすねじ変換)を用いて、ショートプレートにスリック バル自由雲台を取り付けることができる。
●1/4インチねじによるスカイメモSの組み立て
a: 左からショートプレート、エツミ止ネジ大II(3/8→1/4おすねじ変換)、スリック バル自由雲台 b: ショートプレートにスリック バル自由雲台を取り付ける c: スカイメモSに付属する3/8→1/4めすねじ変換部品 d: SLIK三脚の台座に、cの変換ねじを介してスカイメモSを直接取り付ける
脚注1:GITZOビデオアダプターへの接続について
スカイメモS用微動雲台をGITZOビデオアダプターに取り付けるには、3/8インチ長ネジとナット(150円)を購入して9cmくらいに切断して使用する。当ブログ2015-12-07記事「ミヤマカケスとアカゲラとおまけ」に接続方法を記載した。
脚注2:極軸望遠鏡の調整について
マニュアルには、最初にスカイメモSの回転軸と極軸望遠鏡の軸の調整を行なうように記載されている。しかし実際には3点のスケールパターン調整ネジを回すスパナが付属していない。私の経験では、スパナが付属していたとしても、この調整は非常に難しい。スケールも破損しやすいので、この調整はしないことをお勧めする。
●「スカイメモS」下面:3/8インチめすねじ
●スカイメモS用微動雲台
スカイメモS取り付け部(上面おすねじ)も三脚取り付け部(下面めすねじ)も3/8インチ
●カーボンファイバー三脚の雲台取り付け部
当方所有の三脚で調べてみると、SLIK(左)は1/4インチと3/8インチねじ兼用、マンフロット(中)とジッチオ(右)は3/8インチねじである。スカイメモS用微動雲台は、SLIKとマンフロットにはそのまま接続可能である。ジッチオ3型3段システマティック三脚は半球状のビデオ雲台で使用しているため、そのままでは接続できない。5〜10cmくらいの3/8インチねじが入手できればスカイメモS用微動雲台を取り付けることができそうだ[脚注1参照]。もちろんビデオ雲台でない場合は3/8インチねじでそのまま接続可能である。
SLIKの自由雲台について
上面のカメラ接続部はいずれも1/4インチおすねじである。下面は、SLIKの自由雲台「SLIK SBH-280」は3/8インチめすねじ(1/4変換ネジも付属)、「スリック バル: Variable Ball Joint Head」は1/4インチめすねじである。
●SLIK自由雲台 左:スリック バル、右:SLIK SBH-280
●下面のネジ径 左:バル 1/4インチ、右:SBH-280 3/8インチ
●SLIK SBH-280と付属のショートプレート
SBH-280はショートプレートにそのまま接続できる。エツミ止ネジ大IIなどのネジ変換部品を使うとスリック バルのような1/4インチめすねじも接続可能である(記事最下段参照)。
●スカイメモSの組み立て
(左)SLIK三脚に取り付け:モード選択ダイヤル側 (右)マンフロット三脚に取り付け、ショートプレート+自由雲台SBH-280を設置
●極軸の合わせ方 [脚注2参照]
①アリ溝プレートに明視野照明装置を取り付ける。
②経度補正。観測地の経度が東経135゜(観測地の標準時刻の経度)から何度ずれているかを合わせる。極軸望遠鏡側の「指標線」と「日付目盛リング」側にある「経度差補正目盛」を合わせる。この写真は、観測地が東経142゜で、東側(E側)へ7゜で設定した。観測地が大きく変わらなければ、この設定は1回でよい。
③日付と時刻を合わせる。クラッチノブを緩めて、アリミゾプレートが回るようにする。本体側の「時刻目盛」と外側の「日付目盛リング」を合わせる。「時刻目盛」は0時から10分ごとに目盛がある。「日付目盛リング」は30日ごとに長い目盛、10日ごとに中目盛、2日ごとに短い目盛となっている。月数は10日〜20日の中目盛の間に書かれている。たとえば、極軸設定日時が11月20日の23時なら写真のように合わせる(31日は設定されていないが、30日で設定しても問題ない)。
④極軸望遠鏡内のスケールの6時の位置に北極星が来るようにスカイメモS用微動雲台の高度・左右つまみで合わせる。外側の円(2012年)、中間の円(2020年)、内側の円(2028年)なので、2015〜2016年なら、北極星の位置は6時の外側の円と中間の円の間となる。
設定が終了したら、クラッチノブを締め、「モード選択ダイヤル」を★にして電源オンにしておく。
●スカイメモSによる広角レンズ撮影例:おうし座北流星群(2015/11/13 1:35 EOS 5DIII + Sigma 20mm, F3.2, ISO6400, 30")
●アリガタプレート+バランスウエイトによる望遠撮影
a: 微動台座 & アリガタプレートと1kgバランスウエイト b: EOS 5DIII + Prominar 350mm (TX-07C)を取り付ける
●ホットシュー用ファインダー
Prominarの欠点はファインダーを取り付ける台座がないことである。カメラのホットシューにファインダーをつけた。詳細はこちらを参照。
●スカイメモSによる望遠レンズ撮影例①:アンドロメダ座大星雲M31(2015/11/13 0:29 EOS 5DIII + Prominar 350mm, F4.0, ISO6400, 90")
●スカイメモSによる望遠レンズ撮影例①:オリオン座座大星雲M42(2015/11/13 0:15 EOS 5DIII + Prominar 350mm, F4.0, ISO6400, 60")
●同:トリミング
右下に流星
スカイメモSに付属する3/8→1/4めすねじ変換部品を使うと、日本製三脚の台座にスカイメモSを直接取り付けることができる。また、エツミ止ネジ大II(3/8→1/4おすねじ変換)を用いて、ショートプレートにスリック バル自由雲台を取り付けることができる。
●1/4インチねじによるスカイメモSの組み立て
a: 左からショートプレート、エツミ止ネジ大II(3/8→1/4おすねじ変換)、スリック バル自由雲台 b: ショートプレートにスリック バル自由雲台を取り付ける c: スカイメモSに付属する3/8→1/4めすねじ変換部品 d: SLIK三脚の台座に、cの変換ねじを介してスカイメモSを直接取り付ける
脚注1:GITZOビデオアダプターへの接続について
スカイメモS用微動雲台をGITZOビデオアダプターに取り付けるには、3/8インチ長ネジとナット(150円)を購入して9cmくらいに切断して使用する。当ブログ2015-12-07記事「ミヤマカケスとアカゲラとおまけ」に接続方法を記載した。
脚注2:極軸望遠鏡の調整について
マニュアルには、最初にスカイメモSの回転軸と極軸望遠鏡の軸の調整を行なうように記載されている。しかし実際には3点のスケールパターン調整ネジを回すスパナが付属していない。私の経験では、スパナが付属していたとしても、この調整は非常に難しい。スケールも破損しやすいので、この調整はしないことをお勧めする。
接続部分が増えて機械的強度が低下しそうですね。
三脚に乗せただけでもブレが気になるところに、色々入れるのは大変な作業だと思います。
でも上のような写真が撮れるならやってみたい気もします。
まあ、このあたりでベランダを出る気が無いので無理でしょうけど。^^;
by まっちゃん (2015-11-20 08:55)
〉まっちゃんさん
いつもコメントありがとうございます。スカイメモSは優れものです。極軸合わせが簡単です。350mm2分まで試してみましたが、流れないで写ります。
by kinda (2015-11-20 21:35)
5DIII+プロミナーが 載るんですね!
M31をきれいに撮ってみたいものです。
極軸合わせがうまくいかないのが毎度の悩みです(><;)
by Hiro (2015-11-20 21:40)
〉Hiroさん
極軸合わせがかなり正確にできることと、オートガイダー端子がついているので、発展性の点でも良い機械だと思います。
by kinda (2015-11-20 22:24)
星座撮影は、関心がありますが、いい撮影場所が、見当たりません。
従って、kinda さんのブログで、楽しませて、戴きます。
by テリー (2015-11-21 11:50)
〉テリーさん
スカイメモSは人気のポータブル赤道儀です。これから撮影をしたい方も多いと思われます。その割にはマニュアルが初心者向けでないと思い、記事にしてみました。
by kinda (2015-11-21 21:22)
「さらまわし」というブロガーが皆を欺く事を止めないので「公開質問状」を拙ブログにUPしました。
by U3 (2015-11-22 13:18)
これコンパクトで良いですね、すごく興味があるのですが
星の見える空がありません
赤道儀も手放して、鳥に移行しました
by silverag (2015-11-22 22:50)
〉U3さん
もう少し状況を見守ります。
〉silveragさん
当方、車で20分〜30分走って空を撮影してます。スカイメモSはコンパクトで運びやすいのと、極軸合わせが簡単、正確にできることが素晴らしいと思います。
by kinda (2015-11-22 23:32)
最近星空を見るのが楽しみになって来ました。
スマホアプリの星座表をゲットしてから
どこに何があるか簡単にわかり楽しみが増えました^^
まだまだ上手くカメラには納められませんけど・・・
by 美美 (2015-11-26 21:45)
〉美美さん
宙ガールが一人増えましたね。星座表はグラフィックが綺麗でイイです。最近、風景と星空のコラボした星景写真がブームになっています。
by kinda (2015-11-27 21:45)